スタッフ改善がうまくいかない院に共通する、3つの盲点
この記事の結論
「スタッフを変えたいのに変わらない」のは、スタッフの問題ではなく院内の設計に3つの盲点があるからです。①仕組み(誰でもできる仕事が誰のものでもない)、②コミュニケーション(「気を利かせて」は指示ではない)、③評価(数字だけで見ている)。この3つを見直した院では、広告も機器も変えずに売上が4倍、平均勤続が1年未満から5年になりました。
「スタッフを変えたいのに、変わらない」
クリニックの院長先生から、いちばん多くいただくご相談がこれです。
ミーティングも開いた。声もかけている。研修も入れた。それでも現場が変わらない。
私は美容クリニックの全職種(受付・看護助手・医療事務・看護師・カウンセラー・マネージャー・統括)を20年経験してきましたが、こうした院には、はっきりした共通点があります。
スタッフの問題ではなく、院内の「設計」に盲点があるのです。
この記事では、その盲点を3つに分けてお伝えします。
盲点①:ルール・仕組み──「誰でもできる仕事」が、誰のものでもない
備品の補充、申し送り、新人への声かけ、患者様への次回案内。
どれも「誰でもできる仕事」です。そして、誰でもできる仕事は、誰のものでもなくなります。
やる人はいつも同じ。やらない人は気づきもしない。やっている人は「なんで私ばっかり」と消耗し、やがて辞めていく。
院長先生の目には「気の利くスタッフと、そうでないスタッフ」に見えますが、本当の原因は、仕事に名前がついていないことです。
見直すポイントは3つです。
- 「誰の仕事でもない仕事」を書き出す:なんとなく誰かがやっている仕事を、全部紙に出す。
- 係にする:ひとつの仕事に、ひとりの名前をつける。輪番でもいい。
- 見える場所に置く:担当表を貼る。「気を利かせて」と言わなくて済む状態をつくる。
暗黙のルールに頼る現場は、人が入れ替わるたびに崩れます。見える形にした仕組みは、人が入れ替わっても残ります。
盲点②:コミュニケーション──「気を利かせて」は、指示ではない
「もっと気を利かせて」「主体的に動いて」。この言葉で動くスタッフと、動かないスタッフがいます。
これは能力差ではなく、言葉が何をどうすればいいかを示していないからです。
「気を利かせて」は指示ではなく、評価の言葉です。
経験の長いスタッフは自分で翻訳して動けます。経験の浅いスタッフは、翻訳できずに固まります。そして固まったスタッフを見て、院長先生は「言っているのに動かない」と感じる。ここが、すれ違いの出発点です。
- 「何が見えているか」を言う:抽象的な指示を、目の前の事実から始める。
- 「なぜ必要か」を言う:その行動が誰の何を助けるのかを一言添える。
- 「どう動くか」を言う:タイミングと動作まで具体にする。
長く感じるかもしれませんが、この長さで伝えるのは最初の数回だけです。3回で型ができれば、次からは一言で動きます。
盲点③:評価・フィードバック──数字だけで見ている
売上や件数など、数字で測れることだけを評価していると、現場でいちばん貢献しているスタッフが報われません。
受付の空気を保っている人、新人を支えている人、患者様の不安を拾っている人──数字に出ない貢献が、クリニックの土台です。
そして、数字に出ない貢献をしている人から、辞めていきます。
- 数字と、数字に出ない貢献を分けて見る:売上の軸と、物語の軸。
- 成長を見る:半年前と比べて何ができるようになったか。
- 言葉にして返す:「見ていた」と伝えるだけで、人は残る。
評価とは、点数をつけることではなく、「あなたの仕事は見えている」と伝えることです。
盲点は、解消できる
私が看護師長として入った皮膚科・美容皮膚科では、機器も広告費も変えずに、この3つの設計を見直したことで、1年で自由診療の売上が3,000万円から1億2,000万円になりました。平均勤続も、1年未満から5年に変わりました。
コンサルタントとして関わった複数のクリニックでも、同じやり方で、半年から1年で売上が3倍になっています。
スタッフが変わったのではなく、スタッフが動ける設計になったからです。
3つの盲点は、どれも院長先生の努力不足ではありません。医師としての訓練の中に「現場の設計」という科目が存在しないだけです。
だから、伝われば動く院長先生は、たくさんいらっしゃいます。
よくある質問
Q. スタッフが「気を利かせて」で動かないのは、能力の問題ですか?
違います。「気を利かせて」は何をどうすればいいかを示していない、評価の言葉です。経験の長いスタッフは自分で翻訳して動けますが、浅いスタッフは翻訳できずに固まります。「何が見えているか・なぜ必要か・どう動くか」の3つで伝えると、3回で型ができ、次からは一言で動きます。
Q. 評価制度を作り直す必要がありますか?
必要ありません。制度の精密さより、見ている軸の数が重要です。売上の数字だけでなく、数字に出ない貢献(新人を支えている、患者様の不安を拾っている)と成長を見て、言葉にして本人に返す。それだけで、辞めていた中堅が残り始めます。
Q. 3つの盲点のうち、どこから手をつければいいですか?
盲点①の仕組みからです。「誰の仕事でもない仕事」を書き出して、ひとつの仕事にひとりの名前をつける。見える場所に置く。これだけで「気を利かせて」と言う回数が減り、②と③にも波及します。
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